研究内容

臨床研究

慢性疲労の罹患リスクの同定、ならびに診断・治療技術の開発

はじめに

我々は、これまでの研究から、内分泌代謝学、免疫学、ウイルス学などの手法による疲労評価系を個々に見出してきおります。そこで今回の臨床研究では、これまで個々に行われてきた評価系を組み合わせ、疲労の全体像を客観的に評価できる診断法を策定することを目的としています。

対象

適格基準
九州大学病院心療内科、大阪市立大学付属病院疲労クリニカルセンター、名古屋大学病院総合診療科、および国立病院機構さいがた病院を受診された慢性疲労の症状がある患者様で、インフォームドコンセントを得ることができた方を対象とします。対象数は約500名を予定しています。その中で、九州大学病院心療内科における目標症例数は50名です。
除外基準
1.明らかな疲労の誘因となる器質疾患を有する方。
2.妊婦、授乳婦または妊娠している可能性のある方。
3.その他、担当医師に不適当と判断された方。

研究内容

上記の対象者に対して本研究の説明をして、同意が得られた被験者に対して、担当医が慢性疲労症候群の診断および精神疾患の合併の有無を診断する。
九州大学病院心療内科では、問診票・質問票、神経生理学的検査(アクティグラフ、起立試験による自律神経機能評価、コンピューターによる単純計算課題)および血液検査(酸化ストレス、抗酸化能に関する検査)の測定のみを行う。被験者には、自己記入式質問票((a) 疲労の問診票およびChalder Fatigue Scale:主観的疲労感を把握する自己記入式質問票、(b) 疲労感 Visual Analog Scale (VAS):主観的疲労感を10cmの直線上に示す。(c) Center for Epidemiologic Studies Depression Scale (CES-D):抑うつの程度を把握するための自己記入式質問票、(d) Disability Score:疲労による生活障害度の自己記入式質問票)を施行し、通常診療の血液検査時に研究用の採血(血清用スピッツ1本:約10ml)を追加して施行する。また、自律機能検査試験(脈波計および血圧計を用いて座位から立位への起立前後の脈拍および血圧の測定)およびコンピューターによる認知課題(単純計算課題:画面に表示された2つの一桁の数を足し、下一桁を入力する課題を繰り返す)を施行する。さらに、左腕にアクティグラフ(腕時計型小型高感度加速度センサー:2~3Hzで0.01G/Rad/sec以上の加速度変化の回数を記録)を48時間以上装着した後に、担当医が回収する。
上記の紙媒体のもの(診断評価および自己記入式質問票のコピー)およびUSBメモリーに入れた電子データ(自律神経機能検査試験の結果(CSVファイル)、コンピューターによる認知課題(CSVファイル)、アクティグラフの電子データ)は、大阪市立大学大学院医学研究科疲労医学講座にレターパックもしくは、簡易書留など追跡可能な形で送付する。血清は、ドライアイスに詰めて冷凍の宅配便にて山口大学大学院医学系研究科生体情報検査学講座に送付する。
大阪市立大学疲労クリニカルセンターにて、自律神経機能検査の脈波による心拍変動では、Heart Rate Variability(HRV)の周波数成分により副交感神経および交感神経の活動を反映しているHF成分およびLF成分を算出する。また、アクティグラフの測定結果から活動量が算出され、活動量の変化から睡眠覚醒リズムを中心とした生態リズムの解析を行う。血清は、derivatives of reactive oxidative metabolites (d-ROM:酸化ストレスを評価する指標)およびbiological antioxidant potential (BAP:抗酸化力を評価する指標)を生化学的手法により測定する。血清の測定結果は、USBメモリー(電子ファイル)にて大阪市立大学に送付される。

個人情報の管理について

血液を測定した結果やカルテに含まれる情報をこの研究に使用する際には、九州大学病院メディカル・インフォメーションセンターにおいて、お名前の代わりに研究用の番号を付けて取り扱います。被験者と研究用の番号を結びつける対応表のファイルは九州大学病院メディカル・インフォメーションセンターにおいて金庫の中に保管します。この金庫が設置されている部屋は、同分野職員によって入室が管理されており、第三者が立ち入ることはできません。
また、この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、被験者が特定できる情報を使用することはありません。この研究によって取得した個人情報は、九州大学大学院医学研究院心身医学 教授 須藤 信行の責任の下、厳重な管理を行います。
自己記入式質問票は、通常の診療で用いているものであるため、九州大学病院診療録管理室にてカルテと同様に管理されます。
紙媒体のもの(心身の状態の評価および自己記入式質問票)およびUSBメモリーに入れた電子データ(自律機能検査試験、コンピューターによる認知課題、アクティグラフの結果)は、大阪市立大学大学院医学研究科疲労医学講座にレターパックもしくは、簡易書留など追跡可能な形で送付し、下記保管場所および管理責任者が管理します。
(保管場所)大阪市立大学学術情報総合センター医学分館2 階
「疲労克服研究教育拠点の形成」研究室
(管理責任者)倉恒 弘彦

研究期間

症例集積期間:承認日〜平成30年3月31日

研究機関

九州大学病院
研究責任医師 :
九州大学大学院医学研究院心身医学  教授 須藤信行
研究分担医師 :
九州大学病院心療内科       講師 吉原一文
研究分担研究員:
九州大学大学院医学系学府     大学院生 戸谷妙
関西福祉科学大学健康福祉学部 教授 倉恒弘彦
大阪市立大学研究科代謝内分泌病態内科学、疲労クリニカルセンター 
教授 稲葉雅章
東京慈恵医科大学・医学部・ウイルス学講座  教授 近藤一博
理化学研究所・分子イメージング研究プログラム兼大阪市立大学大学院医学研究科システム神経科学   プログラムディレクター兼教授 渡辺恭良

連絡先

九州大学大学院医学研究院心身医学 講師 吉原 一文
092-642-5335(心療内科科外来)(平日8:30~17:00)
092-642-5328(心療内科病棟)(夜間・休日)

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