研究内容

臨床研究

摂食障害患者の脳機能と構造に関する多施設共同研究

臨床研究について

現在、多くの治療法が、医療のさまざまな分野で使用され、多くの患者さんがその恩恵を受けています。現在もより正確な病態の解明やそれに基づく有効な治療法の開発研究が行われています。新しい治療法が病院で使用されるようになるまでには、幾つかの段階を踏まなければなりません。一般に、患者さんのご協力をもとに行われる研究を臨床研究とよびます。

研究の目的や意義について

摂食障害の心と栄養状態の問題には、脳の仕組みと働きが関わっていると考えられていますが、詳しいことはわかっていません。これらを医学的に調べて、病態の理解や今後の治療法の発展に役立てるために、患者さんの御協力を得て、検査データを提供して頂き、分析しています。信頼性のある結果を得るには、出来るだけ多くの患者さんの御協力を得ることが必要です。そこで、東北大学、国立精神神経医療研究センター、千葉大学、産業医科大学と共同で、患者さんに御協力をお願いし、研究を進めていくことにしました。

研究の対象者について

この研究に対象となる患者さんは、次のような基準にあてはまる方です。  同意取得時の年齢は12歳以上です。摂食障害と診断された右利きの方。  ただし、以下の項目に当てはまる方には、安全性の確保や病態の正しい評価などができなくなる可能性があるため、参加をお断りしています。
・統合失調症などの精神疾患の既往がある方
・心臓ペースメーカーなど、体内に金属製の埋め込み物がある方
・色覚異常を含めた眼疾患が認められる方
・閉所恐怖症状などを有する方
・頭部外傷や神経疾患がある方
・妊娠中、及び妊娠の可能性がある方
・その他、研究担当医師が不適当と判断した方

研究の方法について

臨床研究に同意いただいた方全員に、従来の治療に加え、定期的に検査を施行させていただきます。
1) 参加被験者数 [ ]内は九州大学病院での目標参加者数
神経性やせ症患者50名[13名] 神経性過食症患者50名[13名]
2) スケジュール


登録時と1年後において以上の検査を施行させていただきます。
患者さんについてはその間4か月ごとに中間評価として体重の測定、症状に関する簡単な質問を行います。

これまでの病気や現在の状況についての調査をおこないます。現在の心理的状況を調べる質問紙のデータと、既往歴や、カルテに記載されている医療情報、診察や医療面接によるデータを用います。質問紙は通常当科で使用している心理テストです。
 脳画像検査には医療用のMRIを用います。筒状の撮像装置の中で横になってもらいます。撮像中には大きな音がしますので、聴覚保護のため耳栓を付けて頂きます。検査は仰向けに寝た姿勢で行いますが、画像にブレが生じることを避けるため、撮像中はできるだけ頭を動かさず同じ姿勢を保つようお願いします。クッションなどで頭の動きを制限させていただく場合がありますが、不快に感じない程度に調節致します。MRI検査には構造画像検査と機能画像検査があります。構造画像検査は脳の形態を調べるもので、撮影中は頭を動かさないよう同じ姿勢を保って頂けたら結構です。機能画像は撮像中、同じ姿勢を保って頂くのに加えて、眠らないように起きていて頂く必要があります。合計で30分ほどの検査です。
 得られたデータは匿名化をしたのち、共同研究施設の東北大学病院心療内科に一旦集められます。その後、各施設で分担してデータの解析を行います。

研究に関する利益と予測される負担や不利益について

MRIは医療用の装置で安全性は確立されています。MRIは、研究目的だけではなく、脳腫瘍の有無や大脳の萎縮の程度など、診断や治療に有益な情報も得ることが出来ます。
 MRIの撮像装置に入る際、人によっては一過性の軽いめまい感や、潜在的な閉所恐怖症のために不安感を覚えることがあります。多くの方は短時間で慣れますが、もしどうしても不安感が強い場合は申し出てください。なんらかの事情で装置から出たくなった場合はブザーで知らせてください。一旦装置の外に出ると、その撮影は中止あるいは最初からやり直しになる場合があります。
 また、この研究に参加することで、あなたの健康情報が他人にわかってしまう可能性を防止するため、個人を特定できる情報の管理を徹底します。その危険性は、文部科学省・厚生労働省告示第3号「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」に則り、当研究施設から個人情報が漏洩する危険はありません。

健康被害が発生した場合の対応について

研究は慎重に進めていきますが、もしこの研究中あるいは研究の終了後にあなたにMRI撮影による健康被害が生じた場合には、担当医師が適切な診療と治療を行います。患者さんの症状については、十分注意して診察・検査しますが、もし体調等に変化や異常が生じたときにはすぐに担当医師に知らせてください。状況に応じて適切な処置をとります。

経済的な負担や謝礼について

検査によって、普段の(あるいは一般的な)治療費より費用が増える場合は、増額分を研究者の取得している研究費にてまかないます。

研究への参加とその撤回について

この研究への参加は、患者さんの自由意思によるものですから、あなたの意志を尊重して研究が行われます。説明をよく聞いて参加してもよいと思われる場合には同意書に署名または記名捺印をし、日付をご記入ください。また、あなたは、いつでも研究への参加を取りやめることができますので、参加を取りやめたい場合には、ためらわず担当医師に申し出てください。あなたが、研究に参加しなかったり、参加を取りやめることで、あなたが不利益を受けることは一切ありません。これまでどおりに、あなたに最も適した治療をうけることができます。

個人情報の取扱いについて

研究責任者(九州大学大学院医学研究院心身医学教授 須藤信行)が、ID番号等に氏名等を置き換えて、個人情報を切り離して資料の記号化を行います。個人情報識別対応表の保管は、九州大学大学院医学研究院心身医学分野の施錠可能な部屋にて行い、研究責任者・研究実施担当者が厳重に鍵を管理し、入退室を制限、外部への持ち出しを禁止とします。データは施錠された同心身医学分野の研究室の外部と接続できないPC上にパスワードを設定した状態で個人情報を漏洩しないように管理します。研究者がデータを用いた研究解析を実施する際には、匿名化された情報のみが用いられますので、研究責任者を除いて、誰一人として、完全な個人情報を知りえることはなく、漏洩する危険が回避されます。また資料の研究目的以外での使用は行いません。匿名化されたデータはデータ管理施設である東北大学病院心療内科に郵送で送ります。画像データはデジタル情報ですので匿名化されたあと、東北大学病院心療内科に設置されたサーバーにアップロードされます。データ管理施設でデータベースが構築され、研究責任者・分担者にのみアクセス権限が与えられ、データの解析が行われます。データ管理施設に集められた情報の管理責任者は東北大学病院心療内科助教・佐藤康弘が担当します。
この研究による成果は、学術的な研究集会、国内および国外の研究論文として報告されます。その際に、個人情報は一切公開されません。

この研究の費用について

この研究に関しての必要な費用は、文部科学省科学研究費補助金から支払われますので、あなたに通常の治療費以外に新たな負担を求めることはありません。

利益相反について

この研究に関する利益相反はありません。

研究の実施体制について

【研究実施場所(分野名等)】
九州大学大学院医学研究院心身医学分野

【研究責任者】
九州大学大学院医学研究院心身医学分野   教授 須藤信行

【研究分担者】
九州大学病院心療内科          診療講師 高倉 修
九州大学病院放射線部            助教 樋渡昭雄
九州大学大学院医学研究院心身医学分野    講師 吉原一文
九州大学大学院医学研究院心身医学分野 共同研究員 権藤元治
九州大学病院心療内科            助教 波夛伴和
九州大学病院心療内科            助教 山下 真
九州大学病院心療内科            医員 鈴山千恵

相談窓口について

この研究に関してご質問や相談等ある場合は、下記担当者までご連絡ください。
事務局(相談窓口)
担当者:九州大学病院心療内科 診療講師 高倉 修
連絡先:092-642-5335(心療内科外来)(平日8:30~17:00)
    092-642-5328(心療内科病棟)(平日夜間・休日)
メールアドレス:shu-t@cephal.med.kyushu-u.ac.jp(高倉 修)

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研究内容
アレルギー神経生理
慢性疼痛消化器
内分泌
臨床心理
臨床研究