研究内容

臨床心理

臨床心理研究室には、現在医師3名(出向中を含む)、臨床心理士4名が在籍しています。医師2名が出向中で、1名が大学院生のため、当院当科での業務は行っていません。臨床心理士は、心療内科での心理療法や心理検査を実施しつつ、技法のブラッシュアップのための研究活動も行っています。さらに、心療内科の若い医師と医学部学生に対して心理的介入法や心理検査に関する教育を日常の業務として行っています。
この中で、心理療法に関しては、その時代時代で異なった技法が用いられてきました。初代教授の池見酉次郎が心身医学療法の三本柱として挙げた、交流分析・行動療法・自律訓練法については、1960年代から盛んに臨床実践、研究報告が行われていました。1969年には心療内科内に自律訓練法の国際センター(オスカー・フォークト研究所)が文部省の認可で設置され、この領域で国際的なリーダーシップをとっていました。芸術療法・作業療法もこの時期からこうした治療法に加えて行われていたようです。
1980年代には、認知療法・(認知)行動療法・精神分析的治療法が、医師や心理士により実施されていました。90年代にはこうした治療法に加え、ブリーフセラピーや家族療法といった、短期でありながら高い効果を目指す治療法が行われていました。2000年代から現在にかけての臨床心理研究室のメンバーの行っている心理療法は、認知行動療法、自律訓練法、作業・芸術療法、遊戯療法が主なものです。認知行動療法に関しては、第3世代の考え方(マインドフルネス&アクセプタンス)が、当研究室のみならず、心療内科全体に広く受け入れられ、診療に組み入れられています。

臨床について

臨床心理研究室の臨床心理士は、大学病院心療内科の病棟および外来、そしてブレインセンター(主に認知機能検査と知能検査を実施)にて診療に従事しています。病棟と外来では、医師からの要請に応じて、個人心理療法と集団自律訓練法を実施しています。
個人心理療法では、他者との交流、コミュニケーションが不得意なケースを担当することが多いため、受容や共感を中心とした支持的心理療法や遊戯療法、作業・芸術療法を行うことが少なくありません。さらに、患者の変化や変容を促すために、認知行動療法を用いることもあります。最近の動向としては、外来において摂食障害患者に認知行動療法(CBT-E)を用いた治療を導入しています。
集団自律訓練法においては、2~7名ほどの集団で実施しています。自律訓練法は、人の心と体に働きかけるという側面から、心療内科では頻繁に用いられる心理療法のひとつです。リラックス状態を習得する過程で、緊張緩和に加え自らの癖や性格を見つめ直す事ができ、また、集団で行うことで、互いの体験を共有することができるため、様々な気づきを高める効果があります。
心療内科の診療では、各種心理検査を定期的に行っています。特に、入院患者さんには入院時と退院時に検査を実施することで、患者さんの心身の状態を評価し、治療の見立てに役立てたり、心身医学的治療の効果を検討しています。検査の実施、採点が容易なものもありますが、投影法検査や知能検査など、実施や採点、解釈が複雑なものに関しては、多くの場合、臨床心理士が行います。
心療内科では心理検査の結果や心理面接の経過から得られる情報を総合して、患者さんの病態を理解、把握して病態仮説を立てています。臨床心理士は、患者さんの内面で起こっていることと患者さんの周囲で起こっていること、それらの相互関係を総合的に評価、要約していきます。得られた情報を心理学的な現象として要約、翻訳し、適切かつ可能な限り容易な用語を用いて病態仮説を説明する必要があり、それによりチーム医療の中の各職種のスタッフが、一人ひとりの患者さんの情報を共有しやすくなるため、心理学的な患者評価を示すことが臨床心理研究室の重要な役割と考えています。

研究について

臨床心理研究室では、心療内科の診療に有用な心理療法と心理検査の開発研究や、技法を洗練させるための研究を行っています。
心理検査としては、患者のストレス反応を評価するSymptom Checklist 90 (SCL-90; Tomioka et al., 2008)日本語版や、痛みの多面的評価尺度であるShort–Form of McGill Pain Questionnaire (SF–MPQ; Arimura et al.,2012)日本語版の開発などに携わってきました。
治療法としては、自律訓練法(Tomioka et al., 2006)や作業・芸術療法(宮谷ら,2007)を心身症患者に適用した際の治療成果を報告してきました。

関連文献
研究内容
アレルギー神経生理
慢性疼痛消化器
内分泌
臨床心理
臨床研究